コラム
小さな会社の経営者様にむけて
ちょっと役に立つ、
ちょっと面白い、
そんなお話をご紹介します。
強みの見つけ方
2021.11.24
小さな会社にとって大切なのは、弱みを補うことよりも、強みを尖らせることだ。 そんな話を聞いたことはありませんか?
経営者向けの各種セミナーや書籍でもよく言われている気がしますし、中小企業診断士試験の勉強教材でも、そういった話題がよく出てくるように思います。
また私自身、零細企業経営者の実感として、乏しい経営資源(ヒト・モノ・カネ、それに時間)しかないなかで、あまたある弱みを補うことに執着していたら、全く前に進むことが出来ないだろうと思います。
必然的に強みを尖らせることを考えるのですが、そこで悩ましいのが「貴社の強みは何ですか?」という問いです。 自社の強みを雄弁に語ることが出来る経営者さんは、実はかなり少数派なのではないでしょうか?
今回は、そんな悩ましい自社の強みを見つけ方について、いままで教えて頂いたことや自分で悩んだことを通して、私自身が今現在どのように考えているかをお話します。 何かの参考になれば幸いです。
強みは「設定する」もの
「見つける」という言葉には、まだ明らかになっていない隠された宝物を探し出す、といったニュアンスを感じます。ここに1つ目の罠があります。
世界に一つしかないような素晴らしい普遍の宝物がわが社の中に眠っているはず。それを見出さなければならない!
そこまで大げさではなくとも、見つけだそうと思うと、そんな風に気負ってしまうのではないでしょうか。
世の中も会社もどんどん変化していく中で、永遠に変わらない何かを見つけようとすることは、非常に難しい試みだと思います。
とりあえず設定してみて、上手くいかなかったら変えればいいや! そんな風に少しいい加減に考えた方が、変化し続ける状況の中では合理的です。
実績がなくてもよい
強みと公言するからには、それに見合う売上高や顧客数といった実績が必要。 と思われるかもしれません。これが2つ目の罠です。
強みの設定は客観的な事実をもとに行う必要はありますが、多くの方に納得頂けるものでありさえすれば、必ずしも売上高や顧客数といった実績でなくても良いのです。
実績は、これまでの取り組みの結果であり、過去の行動の答え合わせです。
強みをこれからの経営戦略に従って設定するものと考えると、過去の実績という呪縛から解放され、のびのびと考えることができます。
当社の場合
具体例として、当社の強み設定についてお話します。 今後「デジタル戦略支援事業」の売上を伸ばしていくという目的のため、次のように強みを設定しています。
① 現役エンジニアが「IT愛」と最新情報を基に“熱い思い”でご対応
② 中小企業診断士が成長戦略に基づく”冷静な視点”でアドバイス
③ 地元神奈川の小規模事業者を対象にした親身できめ細かなサービス
これらの設定は売上高や顧客数をもとにしたものではありません。ですが、次のような客観的事実(やや主観的内容も含まれますが)に基づいて設定しています。
・事実1
20年以上ずっと、ITエンジニアとしてシステムの設計をしたり、サーバーの設定をいじったり、プログラムを書いたり、テストを実施したり、トラブルに対応したり、という仕事を続けている。またそういった仕事が、実は結構好きである。
・事実2
中小企業診断士の資格を持ち活動している。
・事実3
神奈川で育ち、神奈川で創業、今後も神奈川を拠点に身近なお客様と深く長いお付き合いをしたいと思っている。
はじめの一歩
強みの見つけ方の第一歩は、貴社にまつわるありとあらゆる事実を集めること、です。 このとき「集めるときには選ばない」ことを意識すると、深く悩まずに比較的スラスラと列挙できるのではないかと思います。
例えば、先述の当社の例でいうと、事実1は「課長や部長などの管理職経験がない」というある意味ネガティブな事実と表裏一体であったりします。
ここで深く考えてしまうと手が止まってしまうので、まずは気にせずに、ポジティブな面もネガティブな面も、単なる事実として書き出してしまうことをお勧めします。 一旦書き出した後で、目的に合わせ、都合よく取捨選択すればよいだけなのです。
次回の記事では、集めた事実を取捨選択し、強みとして設定するために役立つ、3つの観点についてお話する予定です。お楽しみに!
この記事を書いた人
若杉 廣
株式会社ホットソウル代表取締役
やさしいDX推進協議会主宰
神奈川県中小企業診断協会会員・中小企業診断士
趣味はブラジリアン柔術、手抜き家庭菜園、ご近所直売所めぐり。