山の弁当

山登りが趣味と言うほどの腕前いや脚前?ではないが、たまには高い山に出かける。

時には山小屋に泊まることもある。が、正直なところ快適とはいえない。山小屋はいわば緊急避難所で、予約があろうが、なかろうが、一夜の宿を求める登山者を受け入れる。シーズン最盛期にはひどく込む。二人に蒲団一枚の割当で、赤の他人と足と頭を互い違いにして一夜を過ごすはめになることもある。最近は、寝袋状になった蒲団にくるまって寝るように改善されたところもある。もちろん、この柏餅の方が気分も良い。小屋の食事もずいぶん良くなった。北アルプスの表銀座と呼ばれるような人気のコースでは、夕食にメインを肉か魚のどちらかに選べ、野菜が添えられ、デザートもつくところがある。

が、山懐が深いとか、険しいとかの理由で、営業期間も短く、登山者も多くないところでは、そうはいかない。料理と言うような作業をしていないのだ。材料や燃料を山小屋まで運ぶのもヘリコプター頼みなので致し方がない。最近行った山小屋では、夕食はカレーかハヤシでセルフサービスだった。お代わり自由だが、食べ残しはできない。ごみを出さないためだ。食べきれる量を自分でよそう。人気の食べ方は、ご飯を真中に片側にカレー、もう片側にハヤシをよそうことだった。カレーもハヤシも既製品なので、それなりの味で疲れた身体にはけっこう美味かった。

翌日、弁当を小屋で作ってくれることになっていた。小屋の弁当は普通は握り飯で、前夜に作るので、昼には固くぼろぼろとして美味いものではない。が、その小屋では温めたレトルトの赤飯だった。握り飯よりは、軽く扱いやすいので、かえって良かった。と言うのも、厳しい登山コースの上に雨に降られ、時間の余裕がなかった。昼飯休憩はわずか10分だった。木の下で多少雨をよけながら、立ったまま赤飯を口に押しこんだ。

夕食も弁当も食べる楽しみは全くなく、歩くためのガソリン補給だった。ちなみに、朝食は中華丼だった。

(M)